「ママが、読書感想文を教えてると、とっても楽しそうなんだって。それに、ママが隣にいると、文章が頭にぽってうかんでくるようになるの、って言ってたわ。」
私は原稿用紙を置いておく場所をチラッとみやったが、マヒロがトイレから戻ってくる足音が聞こえ始めたので、目線を母に戻した。
母は夕食前に家に戻っていった。
翌日、いつもの読書感想文教室をはじめようと、私は食卓の上を布巾でふきはじめると、マヒロは待ってましたとばかりに、原稿用紙を食卓台の上にもってきた。
「ママ、見てみて。」
そういえば、昨日母がマヒロが私がいなくても、自分でやってたよと言ってたやつだ。
知らないことになってるのだからと、わざと私は
「昨日はやらなかったから、おとといのもの?」って聞くと、いいからいいからとマヒロは私をせかして、すぐ読んでほしいとせがんだ。
おとといまとめた感想文が書きとめられていた。
三枚目の二行目までが一昨日書いたものだ。あれ、三枚目に文字が増やされている。
昨日までの文末には文字が続いていた。
あゆみちゃんがおとうさんとふたりだったから、さかあがりができて、おとうさんもあゆみちゃんのおうえんがあったから、さかあがりにちょうせんしつづけられたと思います。私も、おかあさんが私をはげましたり、おうえんしてくれたから、新しいことにちょうせんすることができました。こんどは、わたしがおかあさんをおうえんしてあげたいです。今、おかあさんは、体がわるくてつらそうなので、せいいっぱいおうえんしてあげたいです。わたしのおうえんほうほうは、楽しい話をいっぱいしてあげたり、元気にしていることです。そして、お母さんが元気になったら、お母さんと親子マラソンに出じょうしてみたいです。二人で同じことにちょうせんして、ゴールでハイタッチするのが、今のわたしのゆめです。二人でちょうせんしていると、楽しくて楽しくてしょうがありません。お母さんといっぱい話したり、考えたりできるからです
マヒロ・・・と声に出すのが精一杯だった。
そこには、マヒロの声に出さない私へのエールがしたためられていた。
マヒロは、ママ泣いちゃったっと笑いながら、私の肩に両手をからめてえへへと顔をつける。
「これ、全部は残せないよね。二枚にするの大変だよ。」
マヒロは、顔を私の頬にくっつけて耳元で小さな声でささやく。
私は、マヒロを膝の上にのせると、
「マヒロ、ありがとう。ママはね、マヒロと毎日毎日読書感想文一緒に考えてね、本当に楽しかったの。マヒロが毎日できたら、ママも毎日できたって思えてね。一日一日一個一個やってったら、心の中に力がわいてきたんだ。マヒロのおかげだよ。」
うんうんと、マヒロは頷いた。