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『ぼくの妹』鑑佑樹


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 チクリと胸が痛くなったような気がして、腕に力が入る。仔犬が不思議そうに、愛らしいまあるい瞳で司を見上げた。
 その後、赤や青色のリボンの子も抱っこさせてもらった。どの子も可愛らしかったけれど、司は迷わず初めに抱っこした緑色のリボンの子にした。
「女の子か、それじゃ司の妹だな」
「わぁ、僕の妹! 僕の妹だ」
 司の胸が高鳴った。その横でパパとおじさんが『トライアル期間』の話をしていた。まず二週間お試しで飼ってみて、合わなかったらその期間中はおじさんの所に戻せる――という内容だった。
 司は、関係ないや、だってそんな事にはならないと思った。
 僕の妹、僕が大事にするんだ。僕が守るんだ。そう、強く心に決めたから――。
 それから、おじさんにさようならを言うと、来た時と同じように軽自動車に乗り込んだ。今度は新しい家族を連れて。
 自宅についた時には、陽が沈もうとしていた。空一面が水彩で滲ませたように、濃い藍色と淡い金色のグラデーションを作りあげている。司と仔犬も夕暮れに優しく染めあげられながら、一緒に空を見上げた。
 僕に妹が出来た――。
 それから、司の毎日に綺麗な色がついた。

「たんぽぽ、おいで!」
 名前を呼ばれた仔犬が、瞳をきらきら輝かせながら司の回りを飛び回っている。『たんぽぽ』という名前は司が決めた。ふわふわで柔らかい毛が、まるで綿毛のようだったからだ。司の妹は、少し遊ぶとスリッパを枕にして、すやすやと寝てしまう。司は穏やかなその寝顔が大好きで、顔をほころばせながら眺めていた。
 パパと車で出かけ、たんぽぽの物をペットショップで色々買った。まずはゲージ、それからエサ入れ。女の子だから薄桃色にした。
「子犬のだから、プラスチック製がいいかな。優しそうだし」
 パパがそんなことを言いながら、楽しそうに選んでいるから、司は嬉しくなった。首輪は真っ赤な林檎色で、たんぽぽの軽くて白い毛並によく似合った。
 首輪をつけてから、ママと一緒に初めての散歩に行くことになった。真夏の暑い日差しを少しでも避けようと、夕方に公園まで出向いた。知らない場所で、たんぽぽは小さな尻尾を下げて、怖じ怖じと辺りを見回していた。
「大丈夫だよ、おいで、たんぽぽ」
 すっかりお兄ちゃんらしくなった司の姿を見て、ママは幸せそうに微笑んだ。
 ワクチンという痛そうな注射も打って、二週間のトライアル期間はあっという間に過ぎて行った。
 夏休みの登校日に、司が大感激する事があった。帰宅した司はいつものようにカギを取り出して、玄関のドアを開けた。すると、たんぽぽが玄関まで駆けて来て「きゃんきゃん」と高い声で鳴きながら、司の足元にまとわりついた。

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