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『あの香り』多田正太郎


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「おちんちん、蹴りました、ここ急所ですね、健太は泣きました、でも何度も蹴りましたね、それは、とても悪い事です」
「はー、何ともすみません、言い聞かせますから」
「はい、お願いします」
「分かりました」
「はい、・・絶対に・・、やめてください」
「言い聞かせますので」

直談判の様子を、伊藤が語った。
始めて耳にする話だった。

「いじめ、うーん、ちょっと違うんだ」
「へー、そうだつたのかぁ」
「お前の、母さん、何度も何度も、話にきたよ。日本語で必死にさ」
「そうかぁ」
「思い出すよ」
「知らなかったなぁ」
「お前の母さん、必死だったんだ」
「そうかぁ」
「悪かったなぁ」
「いじめ、っていう、感じでなく、いや、言い訳だよなぁ」
「うん、まぁなぁ」
「俺も、いじめられててよ」
「えー、そうだつたのかぁ?」
「ああ、ひどかった」
「お前もかぁ、知らんかつたなぁ」
「お前を、蹴らなければ、その分俺がな」
「そうだつたのかぁ」
「ああ」
「知らんかった」
「だからと言ってなぁ、すまん、今更だけどよ」
「なんのなんの」
「そうかぁ」

友たちだと思っていた、あの頃の伊藤の姿。
あのシーンが、蘇ったが。すぐに消えた。

「母さんの匂いは、薔薇さ」
「薔薇なぁ」
「ああ」
「どおりで、甘くいい香りだつたもなぁ」
「ははは、そうかぁ」
「ああ、今思えばよ、何でそれが、違和感とかよ、あったのかなぁ」
「今じゃ、芳香剤って、常識、だべ」
「ああ、いい感じだ」
「ははは」
「ガキの匂いも、いい香りする、べさ」
「ははは」
「昔とは、大違いだなぁ」
「ああ」
「まぁ、薔薇の香水、今じゃ影が薄いかもなぁ、いい香りだらけだし」
「いや、お前のトレードマーク、この香り、違う感じが、と言うのか、存在感は全然失ってなんかいないぜ」
「そうかぁ、有難う」
「いや、どういたしまして」
「香りっていいなぁ」
「ああ」

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