「まっ、待ってて!今すぐ準備するから!!」
「じゃあお父さん達玄関で待っとくからなー?」
やっと困った顔をやめたお父さんは、私の部屋から出て行った。パタンと閉まる扉を見ていて、変な気持ちになる。
いつものお父さんだったら私の部屋の扉なんて開けっぱなしで出て行っちゃうし、すぐに疲れてるって言って、私やお母さんと話なんてしないのに…。なんかお父さんが変だ!
大急ぎで着替えて、お気に入りのお出かけ用バッグを持って玄関に行ってみる。お父さんは車のところに行ったみたいで、玄関にはお母さんとメイコだけしかいなかった。
「ね、お母さん!お父さん何かあったの?いつもと違うって言うか…変だよね?!会社で何かあったのかな?!」
「昔はずっとあんなお父さんだったでしょ?最近は違ったけどね」
メイコが靴を履くのを見守っているお母さんは、ちょっとだけ嬉しそうに見える。
「じゃあお仕事忙しくなくなったのかな?!」
「そういうわけでは無いと思うけど…来週もまた出張みたいだし」
「じゃあ何でだろ?」
「お母さんも分かんないけど…。でも、お母さんは今のお父さんの方がいいかなっ」
「私も今のお父さんの方が好きだけど…」
でも、お父さんが浮気とかしてて、それのせいで優しくなってるんだったらどうしよう?!
「そうだ!お母さん!お父さんが出張の時に二人でお弁当作ってあげない?!私の林間学校のお弁当みたいに、捨てられるお弁当箱にすればお父さんも持って行くの大変じゃないかもしれないし!」
「…そうね。たまには、駅弁じゃ無くてお家のお弁当持って行ってもらおっか!お父さんにはギリギリまで内緒ね?」
「分かってる!どんなお弁当にしようかな~…。出張用だし、デザートとかあった方が特別って感じするよね?!」
「メイコもおとうさんにつくる!」
「じゃあ三人で作ろうねー。きっとお父さん喜ぶね!」
嬉しそうなお母さんを見ていると、私まですごく嬉しくなれた。四人でお出かけが久々だからってのもあるかもだけど!
「マイコ来た?メイコのチャイルドシートの準備終わったよー」
「来たよ!お父さんほらっ、早く車に行こ!!今日はいっぱい買わないといけないものがあるんだからー!」
玄関の扉を開けて戻って来たお父さんに大慌てで返事をして、お父さんの背中を押して一緒に玄関の外に出る。私達がお父さんにサプライズしようとしてるなんて聞かれるわけにはいかないしっ。何でもすぐにしゃべっちゃうメイコと一緒にお父さんがいたら、出張の前にお父さんに計画がバレちゃうだろうしっ!
「さて、後は問題の虫除けグッズなんだけど…、最近は虫除けにも意外と種類あるんだな。シールなんてどこに貼るんだ?服?」