「まだ怒ってるの?みんな待ってるんだから、ほら、マイコも早く準備して」
昨日のことなんてどうでもいいみたいにお母さんは急かしてくる。私が何を考えてるかとか、何を悩んでるかなんて、お母さんには本当にどうでもいいって言われてるみたいで、嫌になった。
「どうした?マイコ、まだ準備かかるのか?」
「マイコ行きたくないんですって。マイコの買い物もしないといけないのに…」
「体調悪い?」
ちょっとだけ心配そうな顔でお父さんが私の部屋に入ってくる。お母さんはメイコを一人にしておくのが心配みたいで、お父さんの代わりに私の部屋から出て行った。滅多に家に居ないお父さんと二人っきりなんて、何を話していいかわかんなくて困る…っ。
「そういうのじゃないけど…」
「じゃあどうした?お母さん困ってたぞ?」
「メイコとお父さんとお母さんと、三人で行ってくればいいと思う。私、明日キリちゃん達と買い物行ってくるし」
「キリちゃん達とはもう約束しちゃったのか?」
「まだだけど…」
「じゃあキリちゃん達もみんな、家族で買い物に行くかもしれないだろ?今回はお父さん達と買い物に行かないか?」
それはそうかもだけど…。上手な言い訳を探していると、お父さんはちょっとだけため息をついて、私のいるベッドの端っこに座ってきた。
「行きたくないのは虫除けスプレーのせい?」
「…お母さんに聞いたの?」
「…まぁ…、お母さんもマイコが心配だったんだろうし」
「でも、お母さんっていっつもああなんだよ?!私が心配って言っても、私のしたいことは全然させてくれないし!林間学校に虫除けスプレーなんてダサいの持ってきてるの、私だけだったら浮いちゃうって言っても全然聞いてくれないし。いつも私の都合よりお母さんの考えばっかで嫌になっちゃう!」
「お父さんはどっちの気持ちも分かるからなぁ…」
そんなこと言うなって怒るのかと思ったのにお父さんは、珍しく私の話を聞いてくれた。困ったって顔で笑われると、私一人だけ子どもみたいなワガママ言ってるみたいで、ちょっとだけ悪かったかなって気持ちになる。
「それでお父さん、マイコのためにお母さんと一緒に考えたんだけど。虫除けグッズはスプレーとリングの両方を持って行くってのはどうかな?リングだけで効果が足りなかったときはスプレーも使うって言えば、お母さんも安心するって納得してくれたよ。マイコは両方持ってくのじゃだめか?」
「本当にお母さん、いいって言ったの?」
「うん。だからマイコも一緒に出かけような?色々買わないといけないものがあるんだろ?お父さんとお母さんだけに任せてたら、メイコの好きじゃないものばっかになるぞ?」