「いやあ、あのうがい薬を使うとすごく調子よくてな。口の医者からまた買ってきたから寝る前に使ったろって洗面所いったんだが、彩香が泣きながらリビングから飛び出してくるじゃないの。そりゃ部屋に入れて話を聞くに決まっているだろう。たまには、家の一部を借りている相談役として働かないとな」
あれから父はよく喋るようになった。歯科医院での治療も始まったようで、こうして話していても悪臭がしない。本来の調子を取り戻したのか、よく外にも出かけるようになったようだ。
みんな何かしらの形で家族のことを思い合っていて、でもそれが強すぎるからすれ違うこともあって、切れそうになったその繋がりをたぐり寄せて、また絡み合って、毛玉みたいに一つの塊になって。
その一つ一つのきっかけが、何になるのかなんて予想もつかないけれども。
くっついたり離れたりして、滅茶苦茶になったりして、たまに辛くて、でも暖かくて、決まった形なんてなくて、そういうよく分からないものが愛だったり家族だったりするわけで。
そういうのがきっと、僕の家族なんだろう。
家族してる、ってことなんだろう。