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『この日、僕は『家族』をした。』雨宿ひろゆき


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「関係ないって……お前な、関係ないわけないだろ!? なんだよその言い方、人がせっかく心配してやっているっていうのに。夜中にならないと帰って来ない女子高生なんて、不良以外の何者でもないだろうが!」
 心の底に押し込めていたはずの汚い言葉が、温まりかけていた家庭の空気に水を打った。
 ああ、やってしまった。また怒鳴ってしまった。
 はっと息を呑んだがもう遅い。お互いに目を見開いて真顔に戻るその冷たい一瞬が、強烈に胸をえぐってくる。せっかく直したはずの家庭が瓦解する音が、頭の奥深くで鳴り響き始めていた。
「私は不良じゃない!」
 彩香の大きな瞳から、一筋の涙が頬を伝う。
 悲鳴のような否定だった。
 言い合いで、始めて娘を泣かせてしまった。
「……っ、だったら、いつも夜遅くまで何をやっているんだよ、言ってみろよ! ほら、早く言えって! やましいことがないんだったら、正直に言えるだろうが! どうなんだよ!」
「私は、だって私は!」
 彩香が口を閉ざす。まさか悪い男にでも騙されているんじゃないだろうか。それで夜な夜な家に連れ込まれて、よからぬことをしているのでは。
「だって、なんだよ」
「うるさい! 私は私がしたいことをしているだけなのに! 私の人生なんだから放っておいてよ! もういい、話にならない。わたし寝るから!」
「おい待て、彩香!」
 足早に廊下へ消えていく彩香。僕はソファに深く座って髪を掻きむしるように頭を抱えた。
 こんなつもりじゃなかった。何をしているんだ僕は。折角話をする機会を作ったのに、このままでは振り出しに戻ってしまうじゃないか。
 私の人生ってなんだよ。なあ彩香。子供に幸せになって欲しいっていう僕の心配はどうでも良いって言うのかよ。
 すると、後ろから寄ってきた雅子が隣に腰を掛けた。
 訥々と語り始めた雅子の面持ちは、申し訳ないとばかりに曇っていた。
「私もね、つい最近知ったというか、直接知ったわけじゃないんだけれど……あの子、わたしたちに内緒でバイトをしているみたいなの」
 僕は思わず耳を疑った。
 バイト? だって、そんなこと彩香は一言も。
「友達には、東京の大学に行くための学費にするって言っているんだって。昨日ね、それをあの子に問い質したんだけれど、そしたら、あなたにはまだ伝えないでくれって……ごめんなさい。彩香の考えを尊重するつもりが、あなたまで傷つけてしまうなんて」

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