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『ひとつ屋根の下だからこそ』広瀬厚氏


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「あれっ? ひょっとしてクーラーないんじゃないか」
 部屋をぐるり見渡して祐二が言った。そして部屋の案内を手に取り、設備のところを読んだ。するとやはり部屋にクーラーはない、扇風機のみである。
「やっぱりクーラーないらしいぞ」
「えっ! クーラーないの」と、仁が面食らう。
「でもそんなに暑くないわよ」
 と、由利恵が言った通り、さほど暑くないことに皆気づいた。とりあえず扇風機を回した。それでじゅうぶんだった。
 仁が部屋にあるロフトのはしごを登り、今日僕ここで寝る、とロフトの上から下を見下ろし宣言する。それから、面白いよお姉ちゃんも登ってみて、と誘うが由希奈は、別にわたしはいい、と断る。すると仁は、ほんと面白いんだから登ってきてよ、とまた誘う。ので、しぶしぶ姉は、はしごを登った。そして下を眺めた。
「うん、なかなか気持ち良いわね」
「でしょ」と仁は得意になった。
 このペンションには、小さいながらも温泉が引かれた浴場が二つあった。祐二と仁、そして由利恵、由美、由希奈、に別れて入浴した。なかなか良い温泉に皆満足した。
 まわりに何もない山の中である。風呂からあがり何をしようと考えても、とくにすることがない。談話室にある本を自由に借りられると知り、各自本棚を物色し小説やら漫画やら雑誌を部屋に持ち帰った。談話室にはアップライトのピアノがあった。由希奈はピアノの蓋を開け、ちょっと弾いてみた。すると調律がひどく狂っていて、気持ちが悪く、彼女は苦笑いをした。
 部屋で皆勝手気ままに本を読んだり、会話したりして過ごした。この三階の部屋にはバルコニーがあり外に出られた。依然空には雲がなく、そこから自然の大景観を望むことができた。が、外に出ると虻が執拗に襲った。部屋に設置された冷蔵庫からビールやらジュースやら取り出して飲んだ。値段は安く、と言うか、店で普通に買うのとそう変わらなかった。
 晩餐となった。コース料理をナイフとフォークでいただいた。箸も用意されていた。仁だけは別に子供メニューを誂えた。ワインのボトルをオーダーした。
「どうも食べにくいから、わたし箸にしようかな」
「そうしなさい、美味しくいただければそれでいいのよ」
 ナイフとフォークをいまひとつ上手に使えない由希奈に由美が言った。
「そうか? 箸で食べちゃ、こう、雰囲気が出ないだろ、そう言うのも料理のうちだぜ」
 ワインに顔を赤く染めた祐二が、もつれかかった舌で反駁を加える。すると由利恵が、
「わたしも箸にするわ」と言って、ナイフとフォークを箸に持ち替えた。
「そのお肉ちょっとちょうだい」
 仁は由美のステーキを分けてもらい食べた。気にいったようで、祖母からもいただいた。
 なんだかんだ言って楽しく晩餐をすませた。

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