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『ひとつ屋根の下だからこそ』広瀬厚氏


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 祐二が、靴と靴下を石の上に脱ぎ、川に足を浸からせ遊ぶ、仁と由希奈に注意した。それから二人の写真をカメラに収めた。
 時間になり、食品サンプル作りの体験工房へ来た。展示室があり、樹脂やらロウで模造された色々な食べ物が置かれていた。食品以外の物も作られあった。しゃれっ気を持って作られた物もあり、見ていて目に飽きなかった。
 体験は仁と由希奈と由美の三人がした。天ぷらとレタスとケーキを作った。歩き疲れた由利恵はそばにあったベンチに腰掛け三人の様子を眺めた。祐二はカメラのファインダーをのぞきシャッターを切った。三人の作った食品サンプルはまあまあの出来だった。まあ出来はどうであれ、じゅうぶんに楽しめた。
 町を出て今晩宿泊するペンションへと向かった。川伝いの街道を順調にタイヤを滑らせ車は走った。途中バイクの集団を良く見かけた。先の見えないカーブで、スピードを出したトラックとすれ違い、怖い思いをした。ぽつりぽつりと現れる集落を目に、どんな暮らしをしているんだろう? と車中会話した。どんどん山は深くなっていく。
「一キロ先斜め右方向です」カーナビが指示を出した。
「ペンションまでもうすぐじゃないかしら」カーナビの画面を見ながら助手席に座る由美が言った。
「こんな山んなかに本当にあるのか?」と、祐二が訝しむ。
「あと少しで右斜め方向です」
「こんなとこに曲がる道あるのか?」と祐二がカーナビを疑う。
「そこの看板立ってるところじゃない」由美が指差し言った。
 五人を乗せたミニバンは街道から細い山道へと舵を切った。
「おいおいどんどん細くなっていくぞ。大丈夫か? 」
「三百メートル先左です」
「左です」
「はっ? どこだ。えっ! ここか」
 祐二はハンドルを左に切った。車はさらに細い未舗装の道へとはいっていった。
「うそだろ。冗談だろ。こんなとこにペンションあるのか? 」
「あっ! あそこに〈せせらぎの宿〉って書いてあるよ」と、後ろに座る仁が前に身を乗り出し、小さな看板を指差した。
 山の中ぽつんと、せせらぎの宿は建っていた。一同ほっとした。が、どうも不気味である。
「なんか幽霊とか出そうで怖い」由希奈が言う。
「うん、ドラマで殺人事件とかありそうな場所だよな」祐二が続ける。ちょっと間をおいて、
「僕帰りたい」と仁が言う。
「はいはい馬鹿なこと言ってないで。良さそうなところじゃないの」と、由利恵が皆を宥める。
「ちょっと先にいってわたし様子見てくるわ」
 車をおりた由美がペンションの玄関へ向かった。そして中に入り、しばらくして戻って来た。
「さあ、行きましょ。最初下で呼んでも誰も出てこなくて変だなって思ってたんだけど、よく見たら、受け付けは二階へどうぞ、って紙に書いて貼ってあったから二階に上がって呼んだら、たぶんご主人さんだと思うんだけど出てきて、とても感じが良かったわよ、どうぞって」
 由美の言葉に一同車をおりペンションの玄関をくぐった。フロントで鍵を受け取り部屋へはいった。部屋の中、窓が開けられ網戸となっていた。扇風機が二台置かれている。すぐにクーラーをつけようと、仁がリモコンを探した。
「クーラーどこでつけるのかな?」

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