顔中、土まみれになったぼくを見て、おばあちゃんはケラケラ笑っていた。
野菜を運んでいた時、道にいた可愛らしい女の子がぼくに声をかけた。
「ねえ、みんなで川に行くんだけど、一緒に行く?」
女の子は、ぼくと同じくらいの年だった。
「うん、行く!」
女の子はおばあちゃんに気付いて挨拶した。
「こんにちは」
「ああ、愛沢さんとこの……美結ちゃんだっけ?」
「これから向こうの川に遊びに行くんです」
「そうかい。気いつけてなあ。これうちの孫の良太だ。一緒に行ってくれっかい?」
「はい。行こう、良太くん」
「うん!」
おばあちゃんは、「虫いっからシューって、してけ」と言い、虫よけスプレーをぼくに吹きかけた。「行ってきまーす!」
美結ちゃんを追いかけ、川に向かった。
山に囲まれた道を走って行くと、美結ちゃんの友達の男の子が二人いた。
「早く行くべ」と健介くんが言った。
みんなで走って小さな橋を渡った。セミがうるさいくらいに鳴いている。
今日は暑かったから、川で遊べるなんて嬉しいなー!
健介くんが川を見つけた。(水がキラキラ輝いてる!)
「あそこだ。んじゃ、せーので行くぞ」
「あっ、ぼく、水着持ってきてないけど」
「んなもん、いらねえ」
陸くんが言い、Tシャツを脱いだ。隣にいた美結ちゃんと目が合った。
「行こうよ、良太くん」
「うん」
「よーし、みんな行くぞ。せーの……」
健介くんのかけ声で、一斉に川にジャンプした。
「やっほーい!」
……バッシャーン!
「気持ちいいーっ!」
みんな自由に泳ぎ始めた。
「なあ、こっち来てみろよ」
健介くんが呼んだ。
「ほら、良太。そこ見てみ」健介くんは川の中を指差した。
「あ! ザリガニ!」
川にいるザリガニは初めて見た。健介くんはザリガニを手で取って見せてくれた。
「うわー、すごい。手で持てるんだ」
「健ちゃんはザリガニ取るのじょうずなんだよ」美結ちゃんが教えてくれた。
「ほれほれー、怖いかー?」
ザリガニをぼくに見せてきた。ぼくは「やめてよー!」と言って慌てて逃げ出すと、みんな声を出して笑っていた。
夕方の鐘が鳴り、健介くんと陸くんが帰って行った。