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『おはよう』長尾優作


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「何よ、そんなに慌てて」
 私は話しながら、足早にオフィスを出た。
「今、書類取りに家戻ったら、良太がいなくてさ」
「え、いないの?」
「それでさっき駅員さんから電話があったんだけど……」
「駅員?」
「前田良太って男の子が一人で電車に乗ったんだって」
 私は「えっ」と声を漏らし、廊下で立ち止まった。
「駅員曰く、身長は百二十センチくらい。青い野球帽にTシャツと縞模様の半ズボン着て、リュック背負ってたんだって」
「良太だ……」
「やっぱそれ良太だよな? あいつ、一人でどこ行ったんだ?」
 夫は相変わらず鈍感だった。
「どこって……そんなの決まってるじゃない」

「新白河~。次は新白河です。お降りのお客様は……」
 駅員さんの声が聞こえた。お菓子をあげて仲良くなった隣の席の老夫婦が、
「ここが新白河駅だよ」と教えてくれた。ぼくはお礼をし、新幹線を降りた。
「ついたー!」
 自然がいっぱいで山に囲まれた町に見覚えがあった。
 ついに、ぼく一人で「ふくしま」に来れたんだ!
 前に来た時みたいにバス停を探し、運転手さんに手紙の住所を見せた。
「んだ、ここさ行ぐよ」と言ったので、ぼくはバスに乗った。
 いくつかバス停を通過し、教えてくれた所で降りた。
 ミーン、ミンミン……。ゲーコ、ゲコゲコ……。
 セミとカエルの大合唱を聞きながら田舎道を歩いて行った。
「へへ、おばあちゃんビックリするかな……」
 ニヤニヤしていると、石につまづいてドシンと前に転んでしまった。
「いたーい!」
 ヒザから少し血が出た。『ツバをつければ治る』ってお父さんが言ってたから、つけようとした時、目の前に自転車が止まり、高校生がヘルメットを取り、「大丈夫け?」と言って、ぼくを起こしてくれた。日焼けした顔に坊主頭、なんか焼きおにぎりみたい。
「前さ見て歩け」
 と言って、焼きおに……お兄ちゃんはヒザに傷テープを張ってくれた。
「ありがと」
「おめえ、どこさ行くんだ?」

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