ぼくは布団に寝転がった。今日は、おばあちゃんと寝るから寂しくないや。
――その夜、ぼくは夢を見た。
家族みんなでおばあちゃん家に来る夢だ。
みんな笑って楽しそうにご飯を食べている。
夜はみんなで花火をした。とても楽しい時間だった。
チュン、チュン……
ぼくは目を覚ました。窓の外で小鳥が鳴いている。お日様が昇り、今日も天気がいい。ぼくは背伸びしながら起き上がると、隣におばあちゃんがいないことに気が付いた。おばあちゃんは早起きだから、もう起きたのかな。
ぼくは、あくびをしながら洗面所に行って、顔を洗った。
くんくんくん……あれ、なんだかいい匂いがする。
これは、ウインナーの焼ける匂い。台所から、ご機嫌な鼻歌も聞こえてくる。
「――もしかして」
ぼくは居間に向かって駆け出した。ドアを開けると、台所で誰かが料理を作っていた。エプロンを付けた後ろ姿が見える。
「……お母さん?」
その後ろ姿はお母さんに似ていた。
「おや……良太、おはようさん」
ぼくは、ゴシゴシと目をこすった。おばあちゃんだった。
「もうちっと寝てらっし。朝ご飯まだだかんな」
ぼくは、ドアを閉めて布団に戻った。夢を見たから寝ぼけてた。布団をかぶり猫のように丸まった。自分で勝手に家を飛び出してきたのに、ぼくは何を期待していたんだ。お父さんとお母さんは、きっと怒ってる。ぼくなんか、帰ってこなくていいって思ってるんだ。
うう……うぅ……。ごめん……なさい
一人で家を出てきて、ごめんなさい
だって、ぼく……みんなで一緒に行きたかったんだ
家族みんなで、おばあちゃん家に行きたかったんだもん
……ょうた……
……ん?
ぼくは、バサッと起き上がった。
今、何か――
ぼくは耳をすました。
「りょうた……」
ぼくは、振り返った。
聞こえた……誰かが、ぼくの名前を呼んでいる。