ゆっくりと立ち上がり、窓に近づき外を見た。すると、駐車場に一台の車が止まった。ドアが開き、中から二人が降りてきた瞬間――驚いて声が出なかった。
ぼくは廊下を走り、裸足のまま玄関を駆け抜け、外に出た。
はぁ……はぁ……
夢じゃなかった。
お父さんと、お母さんだ――!
「良太」
「お母さん!」
ぼくは駆け寄り、お母さんに抱きついた。
「ごめんね……一人ぼっちにして」
「お母さんは、ぼくのこと嫌い……?」
「そんなわけないじゃない。大好きよ、良太。パパよりだーい好き」
お父さんが「え?」と言って、やってきた。
「お父さん、仕事は?」
「ズル休みしちゃった。どうしよう、ははは……」
笑いながら頭をかいていた。
「寂しかったか、良太?」
「えっと……ううん、全然」
「嘘つけ、このー」
お父さんは、ぼくの頭をぐりぐりやってきた。
「もう一人で勝手に行くなよ」
「ごめんなさい……。でもね、お兄ちゃんに自転車乗せてもらってね、美結ちゃんと健介くんと陸くんと川に行ってね、ザリガニ取ったんだよ!」
お母さんは微笑んでいた。
「良かったわね、みんなと遊べて」
「良太。ほら、これ」
お父さんは買い物袋を見せた。
「うわっ、花火だ! 買ってきてくれたの?」
「今日、みんなでやろうな」
「やったあ。ありがとう、お父さん!」
おばあちゃんも手を拭きながらやってきた。
「あんりゃあー? なんだっぺ二人してえ、来たんかい?」
「良太がご迷惑をおかけしました」お父さんが頭を下げた。
「なんだい、連絡よこさねえ家族だなあ。あっはっは」
おばあちゃんは豪快に笑った。笑顔がお母さんにそっくりだった。
「いがったなあ、良太」
「うん。ぼくね、夢で見たんだ。みんなでご飯食べる夢」
「そうかあ、んじゃ正夢になるべ。さ、んなとこいねえで中入らっし。飯にすっぺ」
おばあちゃんが手招きしてみんなを呼んだ。
「あ、そうだ……お父さん、お母さん」
二人は振り返り、ぼくを見た。
「おはよう!」
と、ぼくは元気な声で挨拶をした。
二人は顔を見合わせると、ぼくを見て笑顔で返事をしてくれた。
「おはよう」