戦闘員はなんでもないことのように返事したが、一般人である私にとってそれはとても衝撃的なものだった。
「でも、安心してください」
あらかじめ私の反応を予想していたのか、戦闘員は私を落ち着かせようとした。
「我々が行っていることは、全て理由があります。例えば、要人誘拐などは違法取引や賄賂のやりとりをしている人に限っていますし、破壊活動も初めに違法建築物を調べ上げ、耐久度に不安のある物だけです。我々戦闘員の目的は違法行為を行って世間の反感を買うことなので、それが原因で誰かの迷惑になるようなことは絶対にしません」
「じゃあ、そこの自動販売機では何をしていたんですか?」
「不良品の回収です」
どうやら、とある悪徳業者が異物の入った飲み物をこの辺り一帯の自動販売機に納品したらしい。そこで悪の秘密結社の一員である彼らは、自動販売機荒らしの態をしつつ不良品の回収をしていたそうだ。
「おっさんが俺たちに絡むだけならほっといても良かったんだけどさ、買い物したから相手しなくちゃいけなくなった」
口の悪い戦闘員はそう言った。たしかに、私が羽交い締めされたのはペットボトルを購入したあとだった。どうやら、彼は彼で酔っ払いである私をどう対処すればいいのか困っていたらしい。
「そう言えばオッサン、俺に絡む前からひどい怪我してたよな」
口の悪い戦闘員は私の荒れ果てた格好に興味を持ったようだった。
「一体どうしたんだ?」
「実は」
今度は私が話す番だった。仕事を解雇されたこと、一人でやけ酒していたこと、酔いに任せて喧嘩したこと。半ば愚痴のようなものだったが、初対面の戦闘員達は黙って私の話を聞いてくれた。
「なるほど。だったらこういうのはどうでしょう」
丁寧な態度の戦闘員は改めて私のことを値踏みするように観察してからこう言った。
「うちで働いてみませんか?」
「えっ?」
戦闘員の唐突な提案に、私は言葉を失った。
「思いつきでなに言ってんだよ」
「たしかに思いつきですが、名案ではありませんか? 大体今日のことをどう報告するつもりです? 一般人に我々のことバレてしまっているんですよ」
「うっ。そ、それは」
丁寧な態度の戦闘員は手際良く話を進めていった。
「秘密を漏らしてしまったときの一番良い対応は、相手を巻き込むことです。幸い、と言っては語弊がありますが、貴方は現在無職みたいですし、ウチは求人を公にするわけにはいかないので万年戦闘員不足です」
その後、戦闘員が教えてくれた雇用条件はとても魅力的なものだった。