その子を一目見た瞬間、太田の背筋に震えが走った。
日本一有名な巨大スクランブル交差点のすぐ傍に、その子は退屈そうに立っている。白いレースの付いたグレーのパーカー、細い腰を高い位置できゅっと締め上げるチェックのミニスカートが、ひっきり無しに行き交う車の排ガスに揺れている。
太田は思わずスマートフォンを確認する。場所も時間も服装もメールに書いてある通りだ、間違いない。
それにしても――ああまさか、こんな幸運に恵まれるとは!
ぎゃあぎゃあ騒ぐ香水臭い雌豚どもを足早に追い越して、太田はその子の目の前に立つ。
「あの、オオタだけど……メールした」
その子は、手元のスマートフォンに落としていた目を太田に向ける。様子を伺うように見上げる白目の青みがかった美しさに、太田は息を呑む。
「……初めまして、エリです」
ふわりと微笑む唇は、ほんのりピンク色で柔らかそうだ。会社の女どものように、気味の悪い人工物をべたべた塗りつけたりなど一切していない。うっすらと透ける淡い血の色は、まるで太田を誘っているかのようだ。
滑らかな頬は色白でふわふわとしていて、細かな産毛が夕日を浴びて金色に光っている。そこにはらりと一筋かかる黒髪の艶やかさといったら。
太田の胸は震えている。その感動たるや、先ほど遠目に姿を見たときの比ではない。
完璧だ。完璧な少女だ。
じわじわと口の中に溜まる唾液をそっと飲み下す。
「待たせちゃったかな。ごめんね」
「ううん、大丈夫」
その子はもたれかかっていた壁から身を起こす。あ、汚れちゃったかな、と後ろを気にしながら、両手でぱたぱたと尻のあたりを叩く。無邪気で幼げな仕草に、太田の嗜虐心はぞくぞくと掻き立てられる。
そっとその子の足元を盗み見て、太田は期待と歓喜に頬を歪める。
ああ――何て可愛らしい足首だろうか。
足底全体を持ち上げるように傾斜していく踵、これは何と言ったか、そうだウェッジソールだ、以前の彼女が得意げに見せびらかしていたサンダルと同じ形。
でもその子が履いているのはサンダルではなくてスニーカー。僅かに覗くくるぶしは、まるで蹲る小鳥のようだ。可憐で、弱々しくて、それでいて蠱惑的で、今にも握り締めてくれとでも言わんばかり。