『薬師堂の夜』
森水陽一郎
便利屋を営む私のもとに、奇妙な依頼が舞い込む。ここ半年ばかり、千葉の勝浦にある廃寺に、動物の剥製の不法投棄が続いているという。地区長が熱感知式のカメラを仕掛けるが、なぜか犯人の姿は写っていない。私は寝袋を持ち込んで、廃寺の薬師堂に泊まり込むことになるのだが・・・。(小説)
『ニードル刺す姫』
香久山ゆみ
最近の趣味は羊毛フェルトのマスコット作り。ふわふわの羊毛に、専用の針を刺すことで繊維を絡め、形をまとめていく。そうして作った森の動物達とともに、私は冒険の旅に出る。魔女に囚われた姫を救うのだ。……って、は? 私はただのアラフォー会社員なんですけども……。(小説)
『カヤノ』
saiga
京都で大学生活をおくる私は、同い年のカヤノと出会った。ある日、私はカヤノが死んだことを知る。殺されたと聞いたけれど、自殺したっていう話もあった。やがて働き始めた私は、カヤノと同じ美大に通っていた女のコからカヤノのことを聞く。きっと私が、知らないカヤノだと思うんだけれど・・。(小説)
『マリッジブルーマウンテン』
緒方一智
婚約者が探偵になりたいと言い出し、マリッジブルーな聡美が山へ登るとある犬と出会う。その犬は特別臭覚がよく、婚約者の依頼された仕事をどんどんと解決していくことになるが、次第に懐かなくなり、仕事をこなせなくなってしまう。けれども探偵として本当にやりたかった人助けの仕事が舞い込み、、(小説)
『怪奇占い』
粟生深泥
栄華寺という廃寺に怨霊が出るという噂を知ったオカ研の茜先輩に連れられて僕は現地調査へと赴く。民俗学の視点から怪奇現象を解き明かそうとする茜だったが、二人の距離が縮まった途端、怨霊らしき存在に遭遇する。その後、茜が分析すると、怨霊はカップルが近づいたときに出没することがわかった。(小説)
『喜績(きせき)』
和織
十亜は恋愛感情の無い母とゲイの父のカムフラージュ婚の末に生まれた。十亜が三歳の頃に母と父は離婚したが、それからは父の恋人の佑月を含め、四人家族として暮らしている。とある日の佑月と二人きりの夕食で、そのきっかけが、十三年前に父が佑月をフッたことであったと明らかになった。(小説)
『星空でつながる』
ふじようた
定年退職を迎えた私は、これまでの転勤生活を振り返り、結婚前からの妻とのルーティーンだった北斗七星を眺めることは欠かさなかったことを思った。そして、自宅に戻り妻と会話するうち、転勤先と自宅の七箇所を結ぶと北斗七星になることを知り、会社員人生そのものが星空だったと感慨深く思った。(小説)
『花が見たもの』
近藤マッセ
妻が花の水のやり方を忘れてしまったーー。そんな時、男は困り事を解決してくれると言い伝えられる花と出会う。言い伝えの通り、妻の調子はよくなるが、男は自分の体が植物に乗っ取られていることに気が付く。(小説)
『ジェリーフィッシュ』
柊ちよね
虐待を受けた過去を持つ30代の主婦あいは、優しく真面目な夫と2人暮らしで、海月を飼っている。夫がアルコール依存症に陥るも、解決方法を見い出せず、夫と無理心中することを考え始める。その矢先に夫は急死。その後、夫が死の数時間前に書き残した、自分に宛てたともとれるメッセージを発見する。(小説)
『迷信』
比護歩夢
裕二の母は何かにつけては迷信を持ち出し、家族を巻き込んでいた。裕二はそんな母のことが好きで、母の迷信を破ることはしなかった。裕二は迷信を信じていれば良いことが起こると信じていた。しかし良いことは起こらない。裕二は学校が上手くいかないことへの苛つきを母にぶつけてしまう。(小説)
『りりりり、こがらし』
愛美子
砂を噛むような少年時代に孤独なあの人と過ごした夏。あの日、あの場所に立ち竦んでいたのは一体誰だったのだろう。りりりりと蟋蟀が鳴く。凩に晒されながら、凩に負けないように。(小説)
『夢泳ぐ魚』
伽里野凪
私は今夜も彼の機嫌を損ね不満を一身に浴びる。彼は私の抱えた問題には全く気が付いておらず、30代の二人の未来は暗雲に包まれていた。彼が眠りについた後、異変は起きる。私は魚となり夜の街を泳いだのだ。美しいトロイメライの旋律と、幻想に導かれて心の求めるものに徐々に気がついてゆき…。(小説)
『仕組まれた救済』
今井路
パチンコ依存症で大学を中退し、家族からも見放された利治はホームレスに身を落としていた。ある日千田と名乗る男と出会い、今の生活から抜け出す手伝いをしてやるという言葉に乗せられて犯罪に巻き込まれていく。心の弱さ故、同じ失敗を繰り返す利治。やがて殺人の罪まできせられ、逮捕されてしまう。(小説)
『心配の種』
北嶋征生
郵便配達員の夫が仕事中に転倒し、救急で運ばれたと聞き、妻は慌てて病院へ駆けつける。夫はこれまでに何度も怪我をし、その度に妻に心配をかけてきた。包帯姿で妻を迎えた夫は、「大丈夫」と言って妻を安心させるが、そこには長年連れ添った妻への、意外な嘘と芝居が隠されていた──。(小説)
『ヨスロイトルと彩雲』
亜古鐘彦
陽太の祖父は最近妙な言葉を口にする。「ヨスロイトルトサイウンを知らんか?」聞き覚えのない言葉に不信感を抱き、困惑しながらも何のことなのか気になる。老いてしまった祖父の様子に気を落とす陽太だが、ふと見つけた思い出の中に、祖父が老いても忘れられない大切なものと鮮やかな雲を見つけた。(小説)
『追憶のカステラは甘くない』
新卒3年目の会社員杉村優也は、幼少期の初詣で食べたベビーカステラの味を求め旅に出る。地方を巡り奇妙な人々と出会う中で、家族との思い出や失われた幸福の意味に気づき、過去と向き合いながら新たな未来を描き出す物語。(小説)
『人生が二度あっても』
川瀬えいみ
高校生の私の家は、裕福とは言い難い母子家庭。お金がないことで、親友の茉莉との間に気まずいトラブルが起きてしまった。友だちなどいない方が傷付かずに済むのかもしれないと考え始めた私の前に、二通りの人生――ひとりぼっちの人生と交流の多い人生を生きてきたという老女が現れる。(小説)
『観音崎』
藤川六十一
独り暮らしの母と、観音崎へ行った。小さな女の子が、道案内をしたり、坂道で母の足を心配したり、随分親切にしてくれた。母が近くの小学校の先生をしていた時、生徒がドクウツギという毒草を食べて死んだ。初めて聞く話だ。その子が生まれ変わって、来てくれた。母は、そう思って、涙を浮かべていた(小説)
『好感度パラメーター』
小山ラム子
あるときから、俺は会話をしている二人組の頭上に、ハートマークが見えるようになる。それはピンク色のつき具合によって相手への好感度が分かるパラメーターだった。職場の先輩で、好感度をうまく扱う田中さんに憧れを抱きつつ日々仕事をしていくなかで、元気のない様子の後輩、鈴木さんに気が付く。(小説)
『トモダチ』
So
「ヒトよりヒトらしく」をミッションにつくられたアンドロイドの少女ジェニー。彼女は、教室で孤立する貧しい少女ホシノミユキに心を寄せる。しかし、自身の「名前」すらおぼつかない存在である彼女に、本当の友情は築けるのか。二人の交流を通して、「ヒトらしさ」とは何かを問いかける。(小説)
『あれだよ、アレアレ』
まり。
坂口久美子は「女性は補助職」として扱う職場に嫌気がさして、転職を決意。意外にもあっさり転職先が見つかるが、そこでは、「日本のメーカー」の社風があった。最初はとまどうものの、自分の居場所が出来て、しっかりとなじんでいくのだった。(小説)
『スナックのまぼろし』
幹戸良太
父の葬儀を終えた永井洋二は実家で遺品整理をしていた時に、父のコートのポケットからくたびれたマッチ箱を見つける。マッチ箱には「スナックまぼろし」と書かれている。幼い頃から厳しい人だった父が通っていたお店に興味を抱いた洋二はマッチ箱に記載された住所を頼りに寂れた商店街を進む。(小説)
『後の扉』
井邨灯
就活中の主人公は、ある日自分の体が自動ドアに反応しなくなっていることに気づく。自動ドアの開閉に導かれて仕事に就くと、職場となる部屋には開かずの扉があった。後悔が彼を満たした時、扉は就活中だったあの日へと開く。しかし彼はもう一度、運命のようなその扉の本当の向こう側を目指すのだった。(小説)
『星降ればサヨウナラ』
乙馬ゆう
サラリーマンの正平は息子をつれて、流れ星の観測をしようと神社に向かった。不気味な流星を見ると失神してしまった。以降、会社の同僚や友人など身の回りの人たちに、色のついたモヤが見えるようになる。知人には死別や離婚といった「別れ」が次々と訪れ、怖くなった正平は原因を探る。(小説)
『最█の友達』
久仁島芽生
「私」にはひとりの友達がいる。わがままで勝手で、どこまでも自分本位な、かわいい女の子。バレンタインの日、ちょうど会うことになったから、チョコレートを用意していった。彼女は用意していなくて、その場で買った少し高いチョコレートをくれた。彼女は最悪の友達。最初で、最後で、最愛の友達。(小説)
『ヒッチハイク』
中後歩
底辺ユーチューバーの颯太とケンゾーは動画の企画でヒッチハイクを始めた。二人はコンビニの駐車場で出会った咲夜という、どこか謎めいた女の車に乗せてもらったが、咲夜は自分の目的地をなかなか明らかにしない。颯太が眠りから覚めたのと同時に女の車は停車したが、それは思いもよらない場所だった。(小説)
『月の筏』
陶本岬
俺と梓は湖畔で絵を描き、コテージで語り合う。一年前に梓の個展で再会したとき、彼は夢を諦めようとしていた。一緒に絵を描くことにしたのは、梓の作品を見て、彼を離してはいけないと思ったからだ。兄としての自分を振り返った俺は、湖に浮かぶ月の筏を見て、梓を新しい旅に送り出す。(小説)
『ラスト24時間』
ウダ・タマキ
末期がんで余命宣告を受けた拓也。ある日、病院で寝たきり状態で過ごしている拓也のもとへ女性が現れた。彼女が提案する内容は、健康な体を与えてくれる代わりに寿命が二十四時間になるというものだった。このまま寝て過ごす余生より、二十四時間の自由を選んだ拓也を待っていた運命とは?(小説)
『眠り姫』
福丸梨佳
女は友人に対して秘密を抱えながらも今まで親友の立場を守ってきた。しかし友人が結婚を控えたある日の飲み会で、酒に任せてその秘密を過去の笑い話にするために懺悔することにした。彼女は高校時代の過ちを思い出していた。友人が隠していた秘密にも気づかずに。(小説)
『休み時間』
くろいわゆうり
ある日の休み時間。そのとき僕は机に突っ伏して眠っていた。ただ安眠を貪ることができず、様々なクラスメートに話かけられることになった。その何気ない出来事と顛末とは…。(小説)
『コペンハーゲンの小さな旅』
Tempp
予期せぬコペンハーゲンの乗り継ぎ遅れの空き時間で女に声をかけられた。機内で荷物を積むのを手伝った縁。女はせっかくの時間だから人魚を見に行こうと疲れた俺の手を引き、出かけた小さな旅は予想もしなかった彩をもたらす。同じ乗継便だと思っていたのに空港に下りれば女の姿はない。一期一会だ。(小説)
『片道切符』
アズミハヤセ
遠方の老人施設に入居する祖母を車で送り届けるという後ろ向きの役割を押しつけられた瑞希は、黙って運命に従う祖母に自らの姿を重ねてイライラを募らせる。しかし、今は亡き祖父が一緒だからどこにいても大丈夫なのだという祖母の言葉に、人との出会いの大切さを知るようになる。(小説)
『あざらし』
奥山樹生
場所は北海道紋別市の海洋公園。お笑い芸人の卵、長谷川美知(24)と美知の元相方、速水栞(24)が海沿いのベンチで話している。美知は栞とお笑いコンビを再結成したいが、栞は芸人同士の競争に疲れており、それを拒否する。美知は悩んだ末、ピン芸人として生きていくことを考え始める。(脚本)
『桜結び』
小鳥遊まり
乳癌で乳房を切除する事になった美桜は、術前に乳房の写真を残したいと、ネットで写真家・篠田由紀に依頼。しかし名前とは裏腹にまさかの男性だった。焦って断ると、彼は桜と女性をテーマに撮りたいから普通にモデルになってと言い、撮れた写真は来年ここで渡したいから、手術頑張れとエールを贈った。(脚本)
『深淵の地』
Kano Matilda
男は、とある詩集を片手に荒涼とした海辺町を訪れる。偶然立ち寄ったカフェでトランス・ジェンダーの女性と出会い、彼女の亡き祖母の家に宿泊しながら、深淵の地からその先の世界を眼差す。男は滞在中、何度も一線を越えようとするものの、月光に照らされた海が彼をこの世に引き留める。(脚本)
『essay』
福永聖和
東京で演技教室を開くひろしは8月に実家に帰省した。そこで夏休み中の姪っ子れいなに夏休みの宿題である読書感想文の書き方を教えてほしいと頼まれる。れいなは両親が離婚し、母親と暮らしている。母と娘の問題に巻き込まれた。ひろしはれいなに読書感想文の議題として一冊の本を渡す。(脚本)
『贈り物の嘘』
楡井咲歩
画家を目指すが、自信を持てないまま配達の仕事をしている遥人。いつも配達を行う家で出会った琴実とのやり取りが日常の唯一の楽しみだった。ある日配達を行うと、返事がなく、琴実の母は入院していたことを知る。琴実の嘘を知った遥人は、琴実に嘘を込めた絵を贈る。(脚本)
『初恋の遺産』
金田萌
フランス人形のアンジュは自分の髪を綺麗にしてくれた美容師アシスタントの河合春人に恋をする。彼のそばにいたいアンジュは、自分の能力を使い、髪が伸びる呪いの人形を演じることに。河合は何度でも髪が生えてくる都合のいいアンジュをカットの練習台として使い始める。(脚本)
『最期の推し活』
山口耕平
城南ロジティクス新入社員の寺本駿介(24)は、職場でのあるささいな出来事をきっかけに、メンタルの不調に陥った。プライドや恥ずかしさなど、いろいろなものが邪魔をして周囲にSOSを発することができない中、手を差し伸べてくれたのは、少し不思議な『掃除のおばちゃん』だった。(脚本)
『リユースライフ』
和織
朔が命を絶とうとした瞬間、そこに明人という男が現れる。自身も死ぬことを決めていた明人は、自分という存在を譲る為の相手を探していた。朔は顔を変えそれを引き継ぎ、彼の人生をリユースして生きていくことにする。(脚本)
『雨恋』
中西真理
ゆなが暮らす村は深刻な水不足に陥っていた。このまま雨が降らなければゆなか、もしくは親友の花、どちらかが雨乞いの生贄にならなければならなかった。どちらを生贄にするか決めるのは雨乞い師の石川である。ゆな、花、石川をめぐる三角関係の末、どちらかが生贄に選ばれる。(脚本)