小説

『かごめかごめ』春野太郎(『座敷わらしのはなし』(岩手県遠野))

「大道めぐり、大道めぐり」
 一生けん命、こう叫びながら、ちょうど十人の子供らが、両手をつないで丸くなり、ぐるぐるぐるぐる座敷のなかをまわっていました。どの子もみんな、そのうちのお振舞によばれて来たのです。
 ぐるぐるぐるぐる、まわって遊んでおりました。
 そしたらいつか、十一人になりました。
 ひとりも知らない顔がなく、ひとりもおんなじ顔がなく、それでもやっぱり、どう数えても十一人だけおりました。そのふえた一人がざしきぼっこなのだぞと大人が出て来ていいました。
 けれども。だれがふえたのか、とにかく。みんな自分だけはざしきぼっこでないと、一生懸命、めをはって、きちんとすわっておりました。
こんなのがざしきぼっこです。
                       宮沢賢治『座敷わらしのはなし』

 賢治の時代には座敷わらしがいたそうな。現代にはそのような存在はもはや寡聞にして聞かない。では座敷わらしは消えたのか? しかし、そうとも限らないのではないか……。
 こんなのが例えば、現代のざしきぼっこです。少し描いてみましょう。

 ぐるぐるぐるぐると、今の遠野の子供たちは校庭という場所で、再び回ります。一体誰が増えたのか真相を知るのが少し怖い。それはその場にいた十人の子供皆が思っていました。「大道めぐり。大道めぐり…」声も枯れんが如きに叫び唱和しながら、彼ら彼女らは回り続けます。
 しかし、はたしておしまいには子供たちはみな、疲れてへたり込んでしまいました。

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