小説

『ウニを噛みしめていたい』義若ユウスケ(『私は海を抱きしめていたい』)

①花乃
 むかし観た映画。
 インターネットの文学チャットで知り合った男女が恋に落ちて、結ばれる話。
 タイトルは忘れてしまった。
 イタリアかフランスの映画だったと思う。
 マドレーヌを紅茶にひたしながら、ふと、思いだして、そうだわたしもあれをやろう、と、わたしは決意した。
 わたしもインターネットのチャットルームで素敵なボーイフレンドを見つけるのだ。
 わたしはキュートな金髪で、背の高い、女子高生。
 クラスメイトからは「はなのん」って呼ばれてる。
 青木花乃。
 それがわたしの名前。
 わたしはさっそく高校で親友の里乃に相談してみた。
「わたしもインターネットでいい男の人を見つけて、付き合いたいの」
 とわたしはいった。
「ふうん、いいじゃん」
 と里乃はいった。
 なんだかあんまり興味がなさそうな感じだった。
「そんなことより、お腹がすいちゃった」
 と彼女はいった。
 お昼休みだった。
 わたしたちは食堂に移動してスパゲッティをたべた。
 わたしがナポリタンで、里乃はたらこスパゲッティ。
「じゃあ、今日からさっそく活動を開始してみるね」
 と、フォークをくるくる回しながらわたしはいった。
「いい人が見つかるといいね」
 とフォークを口に運びながら、やっぱりあんまり興味がなさそうな口調で里乃がいった。
 彼女のフルネームは桃谷里乃。クラスでのあだ名は「さとのん」。
はなのん&さとのんとして、わたしたちはコンビでスクールライフを送っている。
 いいコンビだと思う。
 アン・ボニーとメアリー・リードみたいな感じ。

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