小説

『ウニを噛みしめていたい』義若ユウスケ(『私は海を抱きしめていたい』)

 つまんない。
 わたしはため息をついた。
 どうやらここには、面白い人はいないようだ。
 わたしはパソコンをとじた。
 今日はここまで。
 翌日。
 ランチタイム。
 食堂でハヤシライスを食べながらわたしは里乃に結果を報告した。
「それで、すぐやめちゃったの?」
 とあきれたように里乃がいう。
「うん、なんだかつまんなくなっちゃって」
「ちがうページものぞいてみたらよかったのに」
「うん、今日、帰ってから、またパソコンひらいて探してみる」
「あんたって本当に、肝心なところで積極性がないのよね。そんなことだから彼氏ができないのよ」
「あはは、違いない」
「まったくもう」
 里乃はモテる。
 彼女とはとなり町の中学校に通っていたころからの付き合いだけど、中学一年生のときも、二年のときも、三年のときも、高一のときも高二のときも高三になってからもずっと里乃には彼氏がいる。
 どういうわけか彼女のもとにはひっきりなしに男の子たちが寄ってくる。わたしのもとにはだれもこない。
 不公平だとは思う。
 でも仕方がない。
 里乃はかわいいし、性格もサバサバしてるから喋っていて心地がいいし、スタイルもいい。
 ようするに彼女は生まれつきのモテモテタイプなのだ。ナチュラル・ボーン・モテガール……。
 それにくらべてわたしはモテない。これは里乃のせい。
 わたしだってそこそこかわいいはずなのに、いつもとなりにいる里乃と比べられるせいで、だれもわたしが本当はすごくチャーミングなことに気づいてくれないのだ。
 ちなみに、性格はいい加減で、スタイルもそんなに良くない。
 つまり、モテない要素がけっこうそろってる。
 つまりつまり、わたしは、ようするに生まれつきあんまりモテないタイプなのだ。
「そんなことより花乃」
 と里乃がいう。

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