ある日、僕が仲間と帰ってきたとき、家には彼女がいた。
肌が雪のように白く、艶やかな長い黒髪。女の子を見たのは初めてだった。
驚きや恐怖より、純粋にきれいだと心から感じた。
不法侵入しているのにもかかわらず、掃除道具を持ってエプロン姿の彼女は無邪気に笑いこう言った。
「はじめまして。私は白雪っていうの」
仕事から帰ると、部屋に荷物を置いて、僕は慣れた足取りで森を進んでいく。
木々の間を抜けて広くあいた場所に出た。
太陽の光が最も多く差し込むその部分に、彼女は楽しそうに動物と話をしていた。
「白雪!」
「おかえりなさい、ブルー」
彼女は太陽に負けないほどのとびっきりの笑顔で僕を迎えた。
青い服を着ている僕を彼女は「ブルー」と呼んだ。
名前のない僕らに、彼女はいつも来ている服装の色にちなんで名前をつけてくれた。
森の中で迷い行くところがないという彼女の話を聞いて、僕たちは家の家事をすることを条件に住まわせることに決めた。彼女は僕たちが仕事にしている間、掃除や洗濯をしたり、動物たちと話したり穏やかに過ごしていた。
「こんなに汗かいて、今日もお疲れ様」
彼女はハンカチを取り出して、僕の額の汗を拭いた。少しドキドキしながら彼女の顔を見ると、目があったら顔が一気に真っ赤になった気がした。
「森の外の話を聞かせてよ」
「ブルーは本当にこの話が好きね」
顔が火照るのをごまかすように、いつものように彼女に話をせがんだ。
ここで白雪の話を聞くのが、僕の日課。
特に、森の外の世界の話は森から出たことがない僕にとって、楽しみな話だった。
「森の向こうには、たくさんの家が集まった町で多くの人が暮らしているの。お城もあるのよ」
「オシロ?」
聞き慣れない言葉に首を傾げると、彼女はクスリと笑った。
「大きな塔の家のことよ。普通の家よりも広くて高くて、部屋が多くて、とてもきれいな家なの。そこに、私はお父さまと暮らして…」