「昔々、あるところに、シンデレラという心優しい娘がおりました。シンデレラは父親と2人、仲良く暮らしておりました。ある日、父親は再婚をしました。シンデレラの美しさを妬んだ継母と連れ子の姉達に召使のように扱われるようになりました。そんなある日、この国の王子様が舞踏会を催すことになり、継母と二人の義理の姉は着飾って出かけました。シンデレラも行きたかったのですが、もちろん連れて行ってもらえません。一人になると、悲しくなったシンデレラは泣き出してしまいました。その時、心優しいシンデレラを見守っていた魔法使いが現れ、ドレスや馬車を用意し、シンデレラを舞踏会へ連れて行ってくれました。美しいシンデレラは舞踏会で直ぐに注目を集め、王子様とダン スを踊ることになりました。一目で惹かれあった2人でしたが、魔法が解ける12時の鐘が鳴り終わる前にシンデレラは帰らなければなりません。慌てて帰る中、ガラスの靴を片方、お城の階段で落としてしまいます。王子様はシンデレラの残したガラスの靴を頼りに、シンデレラを探し始めました。そして、ガラスの靴がぴったりとはまったシンデレラをお嫁さんにもらい、いつまでもいつまでも幸せに暮らしましたとさ。おしまい」
「どうして王子様はシンデレラに一目で恋をしたの? 」
「それだけシンデレラが美しかったんだよ」
「綺麗じゃないと幸せに離れないの?」
「え?」
「召使いのように扱われていれば時間もお金もないだろうし、美容院やエステに通うことなんてできないと思う。でも、それじゃあ夢を与えるおとぎ話として良くないわ。王子様は外見の美しさではなく、もっとこう…」
「ハッハッハッ。そうじゃな。だったら、お前の好きなように物語を作り変えてみたらどうだ?」
「作り変える?」
「わしのような年寄が考えた物語より、若いもんが考える物語の方がよっぽど夢がある。できたら聞かせておくれ。」
「うん。」
私はまだ、物語の本当の意味を知らなかった。なぜおとぎ話がこの世に存在するのか、なぜディスニー作品が人々に愛されるのか、その意味を知らなかった。
「昔々あるところに、たいして可愛くも綺麗でもない、年齢イコール彼氏いない歴のシンデレラと言う女の子がいました」
「母さん、またその話?」
「なんだい?聞き飽きたっていうのかい?」
おじいさんとの約束通り、私は沢山の物語を自分なりに変えていった。
「聞き飽きたよ。帰ってくるたびにシンデレラの話をするだろ?もうそんな話聞かされる歳でもないし」