小説

『Hoichi~芳一』八島游舷(『耳なし芳一』(山口県下関市))

Yo Yo
聞こえるか
祇園精舎の鐘の声
見栄が作った高い船
みなに届かぬ俺の声
海に沈んだ白い骨

 謡っているうちに調子が出てきた。
 それは三十年前に、二つの強力な家、平山家と源内(げんない)家が争った物語とその悲劇的な結末だった。
 両家ともに多くの政治家を輩出し、グローバル企業を支配し、豪邸やその豪勢な生活ぶりで富を誇示した。一時は協力関係を築いたことも何度かあったが、今はあらゆる場面で激しく競っていた。

金を持ってるだけの家
搾り取ったらあと知らねえ
パリピが騒いで夜も明け
買えないものもあると知れ

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