老婆は夢を見ていた。誰かが、何処かへ行こうと手を伸ばしている。 (誰・・・?) 唇が僅かに微笑んだ。 しんしんと 想い出が降る。 やわらかく こころで融ける。 恋心は脆く儚く。そして時に、根雪のように消えはしない。物悲しい程に。 まっしろな雪の下は、虚構か現実か。 指の隙間から一葉の写真が落ちた。枯れた腕が床へ垂れる。 恋心よ しずかに 眠れ。 7/7 前のページ 12月期優秀作品一覧 HOME 1 2 3 4 5 6 7