小説

『三年寝ず太郎』y.onoda(『三年寝太郎』(山形県))

「え?」
「いたずらの話よ」
「…もちろん、わかっているよ」
「ありがとう、太郎君。じゃあ…火を消すわね」
 太郎の右耳には、ゆめ子が吹いた息の音も、火が消える音も、不思議なほどはっきりと聞こえた。
「おやすみ、太郎君。ハトになるのを忘れないでね」
「もちろん。僕たちには、やることがあるんだ」
「そうよ、眠ることと、いたずらすること」

 それからしばらく、深夜塾の生徒が行方不明になる事件が相次いだ。けれど彼らは皆、10年ほど経つと、健康な体とともに立派な若者になって、ひょいと戻ってきた。彼らはどこに行っていたのか、大人たちに話そうとはしなかった。

 そうそう、あれからしばらくして、巨大なハトが町に現れたことは、SNSでちょっとした話題になったという。

 とーびんと。

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