「え?」
「いたずらの話よ」
「…もちろん、わかっているよ」
「ありがとう、太郎君。じゃあ…火を消すわね」
太郎の右耳には、ゆめ子が吹いた息の音も、火が消える音も、不思議なほどはっきりと聞こえた。
「おやすみ、太郎君。ハトになるのを忘れないでね」
「もちろん。僕たちには、やることがあるんだ」
「そうよ、眠ることと、いたずらすること」
それからしばらく、深夜塾の生徒が行方不明になる事件が相次いだ。けれど彼らは皆、10年ほど経つと、健康な体とともに立派な若者になって、ひょいと戻ってきた。彼らはどこに行っていたのか、大人たちに話そうとはしなかった。
そうそう、あれからしばらくして、巨大なハトが町に現れたことは、SNSでちょっとした話題になったという。
とーびんと。