ーどうする?ー
皆、一同に困惑した表情を浮かべました。男の正体という正体が少し掴めないのです。男の肖像はピントの合わぬ被写体のように、少年少女達にとってまだ不可解なものでした。
その時です。一番年少のまだ幼稚園に入ったばかりの稚児が、男にひとり近づいていきました。
「危ないっ」と、残りのこどもたちは皆、思いました。
リーダー格の番長である太郎がいち早く稚児を引き留めようと、駆け出そうとしたその時です。
「うわあああぁ~ん」
と、その男は突然泣き出しました。熊のような雄叫びをあげました。
子供たちみんなは、びびってしまい。皆、一斉に一堂、その場に釘付けになっています。
「踊りたいよおおお」
と、その男はまた、そう叫んだりします。
その声があまりに声が大きいので、大人たちもようやく事態の異変に気づき、何事かと血相を変えてやってきました。警官隊も当然な如く出動しました。彼らはひとりひとり銃をもっています。いつ何がおきても。これで万全です。
そうした状況下においてひとりの可憐な少女。むつこ六し子が男に近づいていきました。そして華奢なお手てで、泣いている男に。静かにハンカチを差し出しました。
すると、男は再び「ありがとう」と返事をする代わりに
「うわあああぁん!」
と、空を見上げては泣き始めました。大人たちがそれを見て、この機会にと男を取り押さえようとしました。事態は最初の異変から五分経ちました。いつのまにか、校庭すぐ近くに救急車が用意されています。これでどんなことがおこっても大丈夫です。