そういって電話を切り、すぐにFBで戸田と北里を検索し、メッセージを送った。返ってきたのは戸田だけだったが、少なくとも大学入学後までは三人でたまに会う仲で、疎遠になったのもなにかきっかけがあったわけではないということはわかった。つまり、祐介らが会った高木真由美は本人ではない誰かということが確定したのであった。
真由美のラインやFBの中になにかヒントとなるような情報や写真がないか調べたが何一つなかった。FBに上げられた投稿などは一番古いものでも一年に満たないものであった。なりすましのために作られたアカウントなのだろうと祐介は思った。
残る手がかりはひとつしかない。祐介はレジの下の戸棚から、真由美から貰った印章をとりだし、店の名前を調べ飛び出した。
・・・
その店は、私鉄の各駅停車しか止まらない駅から歩いて十分くらいの距離で、こぎれいな飲食店の隣にひっそりとあった。中では老人がルーペを使い細かい作業をしていた。祐介は扉をあけ印章を取り出し、言葉を選びながら訊いた。
「この印章を依頼された女性を探しているんですが・・・」
そういってラインの画像を見せた。老人は三秒ほど画面を見つめ「あぁ、彼女なら」といいながら背面の棚にびっしりと敷き詰められた書類を探り、中から数枚抜き出した。