小説

『蔦結びと仮面の森』木暮耕太郎(『怪人二十面相』)

祐介は片手を上げたまま立ちすくみ、夜風が運ぶ彼女の残り香にふかれた。時計の針が零時を指す頃、祐介の心は歳月を越えて再び盗まれてしまったようであった。
・・・

季節は流れ、ショーウィンドウはクリスマスに向けてディスプレイする時季になった。祐介の店は盛況で、忙しくしていることで季節を感じる余裕すらなかった。休憩中にはいつもラジオをBGMがわりにかけていたが、その日のニュースを耳は聞き逃さなかった。

『本日、日本時間未明、ロンドン市街で大規模な火災が発生し、邦人男性一名が意識不明の重体、女性二名が死亡しました。亡くなられた日本女性は高木真由美さん三十八歳・・・』

祐介は思わず立ち上がり、焦る指でネットを検索した。既にニュースは大々的に報じられており、テレビニュースの切り抜きや画像なども上がっていた。祐介は真由美の顔を確認し、狐につままれた気分になった。ほくろの位置や顔つきから同級生である、あの高木真由美だということはわかったが、年相応に落ち着き、夏に同窓会で再会した真由美とは別人だったのだ。すぐに峰岸圭太に電話をした。

「なあ、ニュース・・・みただろ?あの、夏に会った高木って誰だったんだ?」
「落ち着け、おれも混乱している。それが全く連絡つかないんだ。ラインも当然既読がつかない。」
「そういえば、なんで同窓会のとき、高木とよくツルんでた戸田とか北里とか呼んでほしいリストになかったんだよ。」
「それが、おれもそのとき聞いたんだが。高校入ってすぐの時分にすごい仲違いをしたみたいで、呼ばないでほしいって言われたんだ。」
「くそっ、とにかくおれはおれで色々調べてみる。」

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