日が落ちた十九時頃、皆がそれなりにめかしこんで続々と来店した。
「久しぶり!」「今何してるんだよ」といったやりとりが飛び交っていた。
一通りの挨拶が終わり、皆思い思いの席に着席して若干静かになったところで、祐介はそろそろ最初の料理を、という合図を厨房に投げたときだった。
高木真由美が入口の扉を開けて入ってきたとき、皆が時が止まったように感じた。音楽もかかっていたが無音に感じさせる輝きを彼女は纏っていた。
「少し、遅れちゃった?みんな、ごめんね。」
彼女の一言で再び日常に音が戻ったようだった。目元のアクセサリーのようなほくろを見て、間違いなく彼女だと祐介は確信した。二十余年の月日が流れたことが嘘のようであった。
「お・・お帰り、真由美・・・ちゃん。」
最初に言葉をかけたのは松下加奈子だった。中学の頃は仲良しグループ内でアイドルの談話で盛り上がっていたが、他グループとはあまりコミュニケーションをとらない、どちらかといえば目立たない子であった。同じグループの三村紗江も今回の同窓会に参加していた。学校行事くらいでしか真由美と接点のなかった加奈子は彼女をなんと呼んでいいか迷ったようなかんじであった。
「加奈ー、久しぶりー、紗江と仲良し続いてるんだねー。」
「・・・うん!たまに今でも食事に行ったりね。ね?」
「はいはいはい、高木、飲み物は何にする?」
「高木、イギリスってどんなかんじ?ていうか、いつまでこっちに?」