『お兄ちゃんお姉ちゃんこんばんは! 皆の妹系Vライバー、美崎メルだよ!』
まず驚いたのは、Vライバーなる存在の数の多さだった。
『エール・ヒューリットだ。王国復権のため、今日も行くぞ』
奇抜な衣服に身を包んだ彼ら彼女らは、それぞれコンセプト持ってバーチャル世界に存在した。
『今日もアナタに恨めしや。地縛霊Vライバーの椎名うらめです。成仏目指して頑張っていきますよ』
ゲーム配信では、ライバーが失敗をしたり、苦労の末クリアできたりした時のコメントのスピードが、そのままそこいる人たちの胸の高鳴りのように見えた。
『は~皆のおかげでクリアできたー。一人だったら怖すぎてやめてたよ』
雑談配信も多い。ライバーの近況や日常の話題が多いが、コメントの相談に乗っている時もあった。画面の中の存在というのはいい意味で距離感があるから、遠慮なく話ができるのだろう。
『何かできるわけじゃないけど、配信に遊びに来て、少しでも元気になってくれたら嬉しいです。中々私も成仏できませんね』
その世界は、雄斗の目にはあまりに異質に映った。
だが何かが、確かに雄斗の心を揺さぶっていた。
「スパコメ」の印象も大きく変わった。初めは、自分の発言を目立たせるためにお金を払うのだと思っていた。しかし、あるライバーの周年記念配信では、《これからも頑張ってください!》というような簡単な文言しか書かれていない高額なスパコメがよくあったし、別の所では、『ジュースこぼしちゃった!』という発言を受け、《ジュース代どうぞ》《タオル代に》などと少額のスパコメが飛び交っていた。
お礼の返事をもらえる事が嬉しい、というのも勿論あるだろうが、それ以上の何かが、そこにはあった。