ストーリーを語って聞かせると、仁美はうんうんとうなずきながら慎重に耳を澄ませた。
「で、幽霊だったってオチ」
「勝手に殺さないでよ」
空を見上げながら、仁美はチューハイを一口飲んで、苦笑した。
あの時、夜明け前のロータリーで。仁美は話し始めた。転校したのはママの療養のためだったんだ。転校は慣れてるから平気だったけど、同情とかされたくないから理由は誰にも言ってない。ママは、半年がんばってくれた。で、ママがいなくなって、パパは海外赴任で逃避行。もうすぐ卒業で受験もあったし、私は日本に残った。でね、一人なのがよくなかったのかな。なんか抱えてたものが、ばーってこぼれたんだと思う。朝ね、学校に着くとね、顔も腕も真っ赤になって。だんだんひどくなってくの。病院で太陽光アレルギーって言われた。原因はストレス。うん、すっごく怖かった。で、黒ずくめのひきこもりになって、明け方にさまよってるってわけ。今日はさ、ちょっと落ちててさ……命日だから。
明日も散歩つきあうで。悠次郎は、ほとんど無意識に仁美の頭を撫でていた。
パラソルが海風を受け、バサバサとはためいた。慌てて立ち上がり、仁美に陽射しが当たらないよう、パラソルをしっかり地面に突きなおした。
「陽射し、大丈夫か?」
「うん、少しならもうだいぶ平気なんだ。で、さっきの話だけど。オチはまあアリとして。正直言っていい?」
「もちろん」
「……男の方ができすぎかな。抜群のルックス、ってとこに共感が持てないんだよね。他人に無関心っていうのも、なんかクールでかっこいい設定って感じだし」
「そっか、そうとらえるか」