彼女の声がかすれていた。涙声が、悠次郎の心にぱらぱら降ってくる。彼女と同じように鉢を撫でてみた。思ったよりも滑らかだった。
手にしたスマホが音をたてた。友人から返事が来てた。ヒメだろ? あいつってさ、転校してすぐ、病気で死んだらしいよ。
ひでえな、じゃあ横にいるのは亡霊かよ。悠次郎はふんと画面を睨みながら、ロックボタンを押した。
「てかさ、不気味なんて自虐すんなよ。なんで太陽無理なん?」
仁美の顔をのぞきこみながら、聞いてみた。
夕陽に照らされた夏の海は、思わず触れたくなるような輝きを放っている。
悠次郎は買ってきたモノクロストライプのビーチパラソルを広げ、黒のレジャーシートを広げた。右半分は影に隠れるよう、慎重に位置を決めると砂をはらった。靴を脱ぎすて、陽射しの当たる方へ寝転ぶ。背中にじりじりと砂浜の暑さとざらつきを感じた。目を閉じ、彼女を待ちつつ、描こうと考えている漫画のストーリーを練りながら、まどろんだ。
影を感じて目を覚ますと、黒い日傘をさした仁美の顔が目の前にあった。
「おはよう。寝てたでしょ」
「確かに、寝てた」
「買ってきたよ」
さっき悠次郎が慎重につくった影の中にすっぽりおさまると、仁美はコンビニのレジ袋から買ってきたものを取り出し、二人の間に並べた。ハイボールとカルピスのチューハイ、チョコレートにチーズ。悠次郎はハイボールを、仁美はチューハイを取り、ぷしゅりと開けた。
「こんな話、どう?」