「あ、いえ、特に何もないです。すみません。」
美智子先生は咳払いを一つする。
「あの、私はですね、普段あまりしない話題なので、これを良い機会にしてはどうかと思ってるんですが。」
怖い。なんだか詰められている気がする。
「じゃあ美智子先生は?どんな物語が良いと思いますか?」
と、園長がフォローに入る。
「私ですか?私はですね、女性なら武力ではなく会話で鬼と決着をつけるんではないかと思います。ちょっと概要を書いてきたのでお読みください。」
待ってましたとばかりに美智子先生は、手元にある資料をサッと配り始めた。
みんな圧倒されて言葉が出なかった。
“なんでこんな事になっちゃうの~”
隣の和希先生がまた紙の端っこに書いて見せてきた。
「・・・。」
またしても吹き出しそうになってしまったがなんとか堪えた。
「資料を見てもらえればお分かりになると思いますが、話し合いには行きますが、やはり鬼に舐められてはいけないので、お供にはライオンとワシとサルを連れて行きたいと思います。」
「サルは変えないんですね。」
園長が疑問をぶつける。
「はい、鬼ヶ島に向かう船にギリギリ乗れるのがこのメンバーだと思います。それにサルは素早く動けますし、使い勝手が良さそうなので。」
使い勝手・・・思わず突っ込みそうになるが、なんとかこらえる。
「桃姫は鬼と共存共栄の道をお互い模索します。鬼は好きで村を襲っているわけではなく飢餓に苦しみ仕方なく襲っていた、という設定にしようかと思います。そして鬼も穀物の育たない鬼ヶ島を離れ、桃姫の村に来て一緒に生活していく。めでたし、めでたし。でどうでしょうか。」
「・・・。」
静寂。
どうでしょうか?と聞かれても困る。良いのか悪いのか判断できない。
「いいんじゃないでしょうか。美智子先生がせっかく考えて来てくれたんですから一度その案で物語を作ってみてはいかかがでしょう。」
園長は少しの笑顔を見せて美智子先生の意見を受け入れた。