小説

『友達リクエスト』山本(『因幡の白兎(鳥取県)』)

「『同級生リクエスト』とか『知人リクエスト』とかがあったら、本当はそれくらいの気持ちなのかもしれないけどさ。でもその美琴ちゃんは兎和のアカウントを見つけて、『友達』か『友達じゃない』かの二択だったとき、『友達』だと思ったからリクエスト送ったんだと思う。だから兎和もその気持ちに応えてあげたら? ってもし俺なら――」
「そう簡単に言うけど……」
「だよね」
 兎和もひと口飲み、「熱っ」とつぶやく。
「もししばらく考えたいなら、明日のハイキング中止にしてもいいし」
 って勇一は言うだろう。噛みしめるようにミルクを飲み干すと、兎和は「承認」ボタンを押した。勇一が口を開く前に「大丈夫」と笑ってみせる。やっぱり自分の今をちゃんと知ってほしかった。それから美琴の今も少し気になった。
 来週の初めに美琴からメッセージが届くことを兎和はまだ知らない。美琴の結婚式に招待され、そこでみんなと再会することも。今夜はまだ、ヒリヒリ痛む心に布団をかけ、いつもの夢に怯えている。

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