「うん。だって赤ずきんちゃんの事も食べちゃおうとしたし、オオカミさんって悪い人なんでしょう。」
「うーん、どうだろう。パパはそう思わないかなあ。」
なんでなんで、とはーちゃんが僕のズボンを引っ張る。今年小学校に入学したばかりのはーちゃんはまだ僕の腰までの背もない。はーちゃんの目線にまで屈んで、優しく頭を撫でた。
「絶対に秘密にしてくれる?」
「うん!秘密に出来る!」
「本当に?じーじにも言っちゃだめだよ?」
「言わない!はーちゃんおりこうさんだもん!!」
エッヘン、と効果音が付きそうな顔でそう言うはーちゃんが愛しくて、思わず抱きしめてしまう。パパ苦しい、なんて言いながらはーちゃんも小さな手で僕の肩を掴む。
「はーちゃん、パパはね。」
「小さい時、オオカミさんに助けてもらったんだ。」
懐中電灯の光、温かい手、フワフワの毛布、優しい笑顔。
僕は一生、あの日のことを忘れることはないだろう。