「よかった・・・。大丈夫?痛い所は無い?」
そう言って僕の頬を触る。そこにいたのは僕が想像していたような怖いオオカミさんじゃなくて、心配そうに顔を覗き込むお姉さんだった。もしかしてお姉さんのフリをしているのだろうか。ほら、赤ずきんちゃんのおばあちゃんの時みたいに。
「もう大丈夫だからね。あったかい所に行こうね。」
「・・・オオカミさん?」
オオカミさんはキョトンとした顔で僕を見つめた後、ゆっくりと首を振った。そして僕にあったかい毛布を掛けてくれて、もう一度僕を抱きしめる。
「違うよ。きみを助けに来たんだよ。」
「・・・ウソをついてるんじゃなくて?」
「うん、ついてない。」
「僕のこと、食べない?いっちゃん達の事も、食べない?」
「食べないよ。絶対にそんなことしないって約束するから、お姉さんと一緒に行こう。」
そう言ってお姉さんは僕の頭を撫でた。お姉さんの手はあったかくて、こんなにあったかい手に触れるのは久しぶりだった。ううん、誰かに頭を撫でてもらうのだって、すっごく久しぶりだった。そんなことを思っていたらなんだか涙がこぼれてしまって、いけないまた叩かれちゃう。そんな僕の心配とはよそにお姉さんは僕をまた撫でてくれて、そのまま抱きかかえてくれた。お姉さんがドアを開ければそこにはみんなもいて、いつもは泣かないいっちゃんも泣いていた。そんないっちゃんの手を握ってくれているのは優しそうなおじさんで、きっとそのおじさんの手もあったかいんだろうなあ、と思った。
「いいかい、1人の時には絶対にドアを開けちゃだめだよ。」
「どうして?」
「夜には、怖いユウレイさんが来るんだ。もし見つかったら、食べられちゃうからね。」
僕の言葉にはーちゃんがおびえた顔をして自分の目をふさぐ。「ちょっともう、おどかし過ぎよ」なんて妻が呆れたように笑うから思わず僕も笑ってしまった。その笑顔に怖さがほぐれたのか、はーちゃんがでも、と僕を見る。
「みんな夜にはオオカミさんが来るって言ってたよ。オオカミさんに食べられちゃうって。」
「おや、そうなのかい。」