小説

『やまない、やめる、やめた』真白(『羅生門』)

 女生徒は校門の傍まで疾走しながら、相手の通学鞄の中身を漁った。ハンカチ、ティッシュ、リップクリーム、生徒手帳、定期入れ、スマートフォン。目についた不要なものは躊躇いなく放り投げた。最後に手にしたそれ―――こげ茶色の長財布を握りしめると、鞄を大きく雨空へ放った。校門を抜けると、加速をつけて大雨の中を駆け抜けていった。
 その後の女生徒の行方は、誰も知らない。

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