「それで、どうすんの?」
「どうすんのって?」
「いつまで続けんの?」
「・・・。」
言葉に詰まる。心の隅にはあったが、なかなか考えないようにしていた事だ。このままでいいわけがない。けれど強引に終わらせようとも考えていなかった。
「そっちに乗り換えるの?」
美香は探るような表情で聞いてくる。
「いや、そんな事は考えていないけど・・・。」
「けど?」
「・・・。」
けど、なんだろうか。なんで「考えていない」と断言できないのだろうか。
「まぁ色々あるんだろうけどさ、あんまりのめり込んじゃダメだよ。」
「・・・うん。」
私は小さく頷き、ケーキを一口食べた。
夜。家事を一通り済ませ寝室に入ると、夫の賢治と純一がかすかな寝息を立てて寝ている。
「・・・。」
この生活を失ってはいけない、と思う。けれど頭では分かってはいるが心がいう事を聞かない。夫と子供の目を盗んで他所の夫と不貞を働いている。そんな事許される訳がない。それに相手の気持ちだってあるのだ、自分ばかりの気持ちだけで突っ走るわけにはいかない。
『いつまで続けんの?』
美香の言葉がよぎる。
「・・・。」
直人さんから「好きだ」と言われてはいたが、その次の事を言われていない。こちらから聞くのは怖くて止めていた。
どう思っているのだろうか・・・。
きっと向こうだっていけない事をしていると分かっているはずだ。でも聞いてしまえばきっとこの関係が終わってしまう。だからお互い口にしないのかもしれない。
けれど、それでも美香の言う通りこんな事をいつまでも続けていいわけはない。
―――――それから数日がたった。
相変わらず直人さんとの関係は続いている。ただ、なんとなく以前のように恋に浮足立つ事はなかった。たぶん『相手の気持ちを確認したい』という欲求が高まってしまったせいかもしれない。
「最近元気ないですね。」
二人で食事している時に直人さんが口を開く。
「え、いや、そんな事ないんですけど・・・。」
「・・・ご家庭で何かありました?」
「いえ、何も。」
思わず下を向く。何もないと言えば何もないが、あったかと言えばあった。なんと答えればいいのか迷ってしまった。
「すみません・・・。」