小説

『なめるなよ、そこの女』真銅ひろし(『かえるの王さま』)

 寂しそうに俯く。当たり前かもしれないが相当ショックだったのだろう。
「一男、映画でも一緒にいくか。」
 一男から貰ったチケットをポケットから取り出す。
「・・・。」
 苦笑しながら静かに頷いた。

 それから三ヶ月くらいたっただろうか。
 自分も一男も何事もなく平和に学校生活を送っていた。
「あ!!!!!」
 そんなある日の休み時間、一男は突然びっくりするくらい大きな声を上げた。当然周りは注目したが、そんな事は構わず自分のところに駆け寄ってきた。
「高坂君!!これ見て!」
 スマホの画面を目の前にかざす。
「・・・。」
 そこには『光洋社新人小説大賞 大賞受賞のお知らせ』と書かれたメールだった。
「大賞・・・取ったみたい。」
 息が止まる。一瞬で鳥肌が立つのを感じた。
「え、嘘だろ・・・すげーじゃん!!!光洋社ってデカイよな。」
「うん、超デカイ。有名な作家も一杯輩出してる賞。だから受かるなんて、ましてや大賞なんて取るとは思ってもみなかった。」
「すげー・・・・やったじゃん!!」
かなりでかい声で話していたせいもあるのだろう、気が付くと教室のみんながこちらを見ていた。
 その後、嬉しさのあまりクラスの人間にも話したし、先生にも話した。みんな大いに喜び、数日後には学校中に広まった。一男と一緒にいるだけで周りのヒソヒソ声が聞こえる。ちょっと前までは地味で目立たない存在だったのに、今や時の人だ。

 そしていつものように学校の帰り道。
「なんだか落ち着かないね。」
「すごい事したんだからもうちょっと胸を張れよ。」
「でも、いきなりだから、急にはできないよ。」 
「そのうち慣れるよ。先生。」
「やめてよ、そういうの。」
一男は困ったように笑う。
「あ、それとさ・・・相談しようと思ってたんだけどさ・・・。」
「なに?」
「・・・。」
 もじもじとしてなかなか話そうとしない。
「なんだよ、言えって。」
「・・・あの、実は、妹尾さんに声かけられてさ・・・。」
「妹尾・・・。」

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