「おかえりなさい、望人さん。もう大丈夫よ」 「望人くん、おかえり。辛かったね」 男は後ろを振り返り、畳の上に残した指輪を見つめた。死者の国まで供をし、こうして別れを告げたのだから、この先妻に縛られて前に進めなくなることはもうないのだろう。それでも妻が自分から一歩遠のいていったことが苦しく、男は再び涙を零した。 5/5 前のページ 3月期優秀作品一覧 HOME 1 2 3 4 5