小説

『誰』斉藤高谷(『白雪姫』)

 もちろん、こんなことは万に一つも起こらないだろう。けど、一パーセントでも可能性があるという点では、〈全然見当違いの妄想〉とは対岸にいると言っても過言ではないのだ。ないのよ。
 あたしは万全を期す女。もし、あたしより美しい女が、あたしより先に王子の唇を奪うような女がいるのなら、確実に始末しておかなければならない。キスぐらいのことでは目覚めないほど深く眠らせてやらなくては。
 そこであなたの出番というわけ。
 だから、ねえ、鏡よ鏡。
 この世で一番美しいのは、誰?

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