小説

『星空列車と夜』亀沢かおり(『銀河鉄道の夜』『よだかの星』)

 柔らかなテノールが震えている。頭を掠めるのは嘲笑、困惑、侮蔑の声。刺さる視線、差される後ろ指。きっとこれから先も、季節は私たちが愛し合うことを許しはしないだろう。それでも。
「あなたが隣にいてくれるならば。」
 まわした腕に力をこめる。彼の腕にも力がこもる。

 どこか遠くで、発車ベルの音が、空を超えて響きわたった。

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