柔らかなテノールが震えている。頭を掠めるのは嘲笑、困惑、侮蔑の声。刺さる視線、差される後ろ指。きっとこれから先も、季節は私たちが愛し合うことを許しはしないだろう。それでも。 「あなたが隣にいてくれるならば。」 まわした腕に力をこめる。彼の腕にも力がこもる。 どこか遠くで、発車ベルの音が、空を超えて響きわたった。 5/5 前のページ 1月期優秀作品一覧 HOME 1 2 3 4 5