そして水中で赤い爪を噛んで飲み込んだ。 ミナコさんの思い出が消えませんように。 私は一心に祈った。 目をあけると、ミナコさんの美しい笑顔が水底に見えた気がした。それは愛する人を失ったあとも懸命に生きた人魚の姿だった。 水の外で、真冬の呼ぶ声が聞こえ、人魚の影は鈍く水に溶けて揺らめいた。 伝説の人魚もミナコさんもヒロシさんも、今頃あの青い海を泳いでいるのだろうと、思った。 5/5 前のページ 1月期優秀作品一覧 HOME 1 2 3 4 5