小説

『間抜けなのはだれ?』小山ラム子(『裸の王様』)

 一斉に始まった『村長は間抜けだ』コール。村長は顔を真っ赤にして秘書やお手伝いさん達と一緒に広場を後にした。
 集会が解散する。みんなが私を取り囲んで「いやー危うく騙されるとこだったよ」「マミはえらいな」「マミこそ村長にふさわしいぞ」「そうだそうだ。世襲制なんてやめちまえ。マミが村長やれ」とそれぞれ声をかけてきた。それに曖昧に応えながら「用事があるので失礼します」と言ってその場を離れる。みんなはこれから村長への悪口でさらに盛り上がるのだろう。
 頭に鳴り響く『村長は間抜けだ』コールに思わず耳をふさぐ。でもそれはいつまでたっても止んではくれなかった。私がしたことは正解だったのだろうか。噂話を聞いていた頃から感じていた、いやもしかしたらもっと前から感じていたかもしれない喉の奥の閉塞感は未だに私を苦しめている。

1 2 3 4 5