小説

『白い影』和織(『影のない犯人』)

「はは、ごめんごめん。考えてもしょうがないけど、せめてお前には話しておこうかなってさ。父さんが生きてる間に、気づくことができなかったから。遺産のことは本当に、心配しなくていい。お前からなにか盗るなんてしないよ。むしろ、俺の分を半分持ってってくれないか?なんていうか、前ほど金に執着がなくなってしまったんだよね。父さんが、金に飽き飽きしてこの世からいなくなったみたいに思えてさ」
 妹は、ゆっくりと考え始めた。でも何を思い出して、どこを振り返ればいいのか、全然手が付けられない。思考の回転を急かすように、彼女は箸を動かす手を加速させた。

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