小説

『おぶすびころりん』室市雅則(『おむすびころりん』)

 すっかり夜になり、人気もなくなって月が輝いている。
 これ以上、ここにいてもやたらめったら転んでいる変な女だ。
もう家に帰ろう。
 足を進めるとこれまで張りつめていた気が緩んだせいか膝に鈍い痛みを覚えた。
膝を見ると擦りむけて、土が付いてどす黒い。
土を払おうと手を伸ばすと、手のひらが痛い。
 手のひらも皮が擦り切れていて、小石の形にデコボコになっているし、血が滲んでいた。
 犬のように舌を出して、滲んだ血を舐めてみる。
 私は生きている。

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