小説

『スリーピングアイドル』柿沼雅美(『眠れる美女』)

 「この写真、実は撮られた日時が分かっているんです。僕らが確かめに行ったときに見せてもらったのがコンパクトデジカメだったので日付で保存されていたんですよ」
 「はぁ…それが何か」
 マネージャーはちらっと私を見、私もよく意図がくみ取れず首を傾げた。
 「過去のスケジュールって分かったりします?僕らもさすがに個別の日時スケジュールまでは把握してないので」
 「あぁ、分かりますよ」
 マネージャーは急いで部屋を出てデスクからノートパソコンを持ってきて開いた。パソコンのハードに過去のスケジュールが保存されていた。
 「11月4日午後8時…ですか、3年前のその日は、歌番組の収録ですね。念のため4年前は…あ、4年前も5年前も夜公演やっている最中ですね。ちなみに一昨年と去年はMVの撮影が入っていますね。え、でもそうしたらこの時間にはみほは身動きが…」
 マネージャーはあごを手でぐりぐりとして口ごもる。言いたいことを言えないときによくやる行動だった。
 「私は身動きが取れないから、こんなところでこんなオヤジと裸で写真撮ってるのはおかしいはずです」
 私が言うと、マネージャーも、そうなります、と言った。
 安西は、そうですか、うーん、そうですよねやっぱり、と私を見る。
「どういうことでしょうか?」
 マネージャーが言うと、安西は一呼吸する。
「まぁちょっとゆっくり座りましょうか。遅い時間に申し訳ないですけど、僕の中での疑問をお話させてください」
 あ、はい、とマネージャーが従い。なんでそんなに言いなりなんだよと心の中で思いながら私も座った。あ、と言ってマネージャーが席を立つ。
 「これはみほちゃんじゃないんだよね?」
 いつのまにか勝手にちゃん付けしている安西に、だからそうです、と言い切る。
 小さいペットボトルのお茶を持ってきて、私と安西の前に置いたマネージャーに、親切かよ、と心の中で突っ込んだ。
 「あ、いただきます、恐縮です。僕はこの写真を見た時に違和感がありました。あ、その前に写真の経緯ですよね。この写真はいわゆる大富豪の方のカメラに保存されていたものです。フランスの企業の社長が逮捕されたニュース知ってますよね、その社長とお金のやりとりがあったそうです。そこで調査していくうちに彼のお金の使い道に行きついた。彼は多くの若い女性とこのような写真を撮っていました。その中で僕が気づいたのがみほちゃんの写真でした」
 「でもそれは」
 私が否定すると、安西は大丈夫大丈夫と私に手で伝えた。
 「おかしいなってまず思ったんです。デジカメの日付記録では去年なんです。さっきマネージャーさんの言ったとおり、3、4年前と去年じゃ顔の印象が違う。あ、整形とか言ってるんじゃなくてですよ、10代と20歳になった時じゃみほちゃん違うじゃないですか、化粧落としたと言っても」
 「すっぴんです」

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