屈託のないその笑顔を見つめていると、一介のゴミに過ぎない私の心に、なにか温かいものが広がるのを感じました。それは雪解けの湖の水面に花弁がひとひら舞い降りたような、どこまでも静かで尊い温もりでした。
なんと数奇な運命でしょう。
本来の道から大きく逸れてしまった私が、最後の最後に、またこうして人の役に立てるなんて。
女の子はポーチから取り出したポケットティッシュで、私を手厚く包んでくれました。真っ白な世界に包まれる寸前、急に遠ざかりはじめた意識の中で、私は彼女の顔を再び目にしました。
その笑顔は、かつて暗闇の中で思い描いていた、子供達のほっこりした笑顔と同じものでした。