僕が痩せていることをやたらと気にした大男。用意されたご馳走。伸ばしていた手でそのまま金の卵をつかみ、震えながら口元に運び、わずかに食む(はむ)。
そうか、僕も、食われるんだ。
「美味しいかい?」
大男が僕の顔を覗き込む。小さかった瞳は大きく見開かれ、ぎらついている。逃げ場はない。
「…美味しいさ。」
頬に涙を伝わせながら答える。金の卵の味はわからなかった。
思い出したのは、食べ飽きたチーズの味と硬いパン。質素を望む母さん。8年間、食卓に肉が並んだことはなかった。望んでいたはずの豪華な食事を最期の晩餐として、僕は母さんとの食事を思い出す。涙をこぼしながら、ひたすらにつぶやく。
「美味しいさ。美味しい。……とっても、美味しいさ。」