それは手も足も服も同じで、今日だけではない日々の汚れが彼女の体中に染みついているのだった。
薄暗い家の中で眠るシンデレラは、とても小さい。
「未来は当然の結末だわ」
ニキはぽつんと言った。
「私たちは、バチがあたって当然だわ。シンデレラになんでも押し付けて、自分たちだけ舞踏会に行ったりして。あの子はこんなふうに毎日、文句も言わずに働いてくれていたのに。私だってこの数ヶ月、さんざん掃除したのだから、少しは苦労が分かるわ。」
ニキはそう言うと、すたすたとシンデレラのそばに歩いていく。
「あ、こら!」
ルークの声と同時に、ニキは自分のストールをそっとシンデレラにかけた。
「別にこれくらい良いでしょう?こんなことで、未来は何も変わりはしないわ」
きっぱりとした声でニキがそう言った。
広々としたこの家は、隙間風が吹いて肌寒い。
ルークは立ち上がると、階段の手すりにぴょんと飛び乗った。
「さて、それじゃあこれからが、俺の出番だな」
明るく言うと、ルークはどこからから、木の棒を取り出す。
「なにそれ?」
「魔法の杖。これで俺はこれから、シンデレラに魔法をかけるんだ」
ルークは、えっへんと得意げに腰に両手を当てた。
「俺が何の為に過去に来たと思ってるんだ?それは、役割があるからだ。俺は、シンデレラに魔法をかけて彼女を幸せにする役目なの」
言いながら、ルークはニキのポケットの中から栗かぼちゃを取り出した。
「必要なものは、えーっと、あとはネズミか」
ルークは「おーい」と声を出すと、さきほどじゃれていたネズミ達がやってくる。「手伝ってくれる?」ネズミはうんうん、と頷いた。
何がなんだかわからずに、呆然とするニキ。
するとルークはニキの目の前に立ち、その服に触ると杖をえいっと振り上げた。
ニキの服は、たちまち綺麗なドレスに早変わりした。
それはどこか一風変わった服で、キラキラと星のように瞬いている。
「シンデレラにバレないように、ニキにも魔法使いになっておいて貰うよ」
ルークはパチンとウインクする。
途端にルークも、人間の魔法使いの姿になった。