強烈に女にモテたいと思ったのは高校三年の時だ。
今までずっとモテない人生を送って来た。背はそんなに低くはないが、太っていて、髪はボサボサの伸びっぱなし、ふちのでかいメガネ、人ときちんと目を見て話せない、いつもおどおどしている。はっきり言うと暗いの一言。ネットの掲示板でイケメンアイドルなんかをディスってるのが精一杯の人間だった。
そしてそんな自分がとうとう我慢の限界を迎えた。
「モテたい!!!!」
「ヤリたい!!!!」
「格好良くなりたい!!!!」
自分の中の願望と欲望と本能がいっぺんに押し寄せた感じだった。
とにかくもう部屋の中に閉じこもって、ちこちこと無意味なネット掲示板に書き込むのをおさらばしたかった。今まで『モテる』を避けて来た。いや、避けなければモテるのかと言えばそんな事は全くなく、モテない事を直視してしまうと心が耐えられないから、あえて『モテる』を避けて来た。しかしもう自分の本能から目をそらすことは出来ない。自分は『モテたい』『ヤリたい』のだ、しかも強烈に。そしてこの願いを叶えてくれる人間は自分の周りには二人しかいない。
そう、姉二人だ。
小さい頃に両親を亡くしてしまっているので姉二人が親代わりのようになっている。
「あ、あ、えっと、ね、姉さん、ちちち、ちょっといいかな。」
恐る恐るリビングでテレビドラマを見ている次女の玲子姉さんに話しかける。
「・・・何?」
こちらを見ない。しかも何だかうっすら怒っている。ここで心が折れそうになるが、そんなわけには行かない。
「ちょ、ちょ、ちょっとそ、そ、そ、相談があるんだけど・・・。」
「今やめて。」
「はい。」
玲子姉さんはテレビから目を離さない。逆らってはいけないのでジッとドラマが終わるまで待つことにした。
玲子姉さんは26才の社会人。アパレルの会社で働いていていつもオシャレだ。着ている服のブランドはさっぱり分からないが、それなりに高そうだ。そして小顔で目が大きく、ふっくらした唇、ユルふわのセミロングの髪型、背が低いので見た目はすごく愛らしく見える。しかし自分とは9つも離れているからほとんど相手にされていないし、話しかけたら怒りそうな雰囲気をいつも纏っている。
二十分後、ドラマが終わり玲子姉さんは「んん~。」と一つ伸びをして立ち上がり、どこかに行こうとした。
「あ・・・。」
慌てて引き止める。
「何?」
「あ、あの、そ、そ、相談が。」